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(旧 「防水屋台村」建設中)
RN223Y:早稲田大学OBによる「建築材料および施工」連続講演 第2回
早稲田大学OBによる「建築材料および施工」連続講演

第2回講師:中根 淳 氏(元大林組技術研究所勤務)
中根さんPC130009


早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科の輿石教授は2013年3月より、早稲田大学理工学部55号N館会議室で学生とOBによる勉強会である「建築材料及び施工研究会」を隔月で開催しています。

第1 回は難波蓮太郎氏(2013年5/31)、第2 回は中根淳氏(7/26)、第3 回は十代田知三氏(9/27)、第4 回は石川廣三氏(12/13)、第5回は中山實氏(2014年4月18日),第6回は松本洋一氏(7月4日)、第7回は小早川敏氏(10月20日)が講師となり熱弁をふるい、いずれも予定の講演時間を大幅に延長しての力の入ったものでした。

講師は、それぞれ自らの学生時代からの 研究過程の苦労話や研究者としての様々なノウハウを伝えた。さらに輿石教授は「建築材料の教科書にはあまり載っていない先端的なお話や研究の裏話苦労話をお聞きしている。その後の懇親会は毎回盛り上がり、研究室の卒論生・院生とって大先輩方と交流ができる貴重な機会だ」と連続セミナーに大きな手ごたえを感じています。

各講師は、苦い経験や、研究者・技術者としての喜びを率直に語ります。記者は毎回参加させていただき、予定時間をいつもオーバーする講師の熱演に、後輩たちへの愛情を感じ、うらやましく思っていました。これまで各回の様子はルーフネットで紹介してきましたが、このほど、輿石研究室としての講演記録をいただきましたので、これを機に「ルーフネット・輿石研究室だより」として順次紹介してゆきます。第2回は元大林組技術研究所部長の 中根淳氏です。
中根・輿石PC130092
写真左:中根淳氏。右:輿石直幸教授。

第2回 「企業における技術開発と研究活動について」
■講師:中根淳先生
■開催日時:2013年7月26日 18時~21時
■開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス 2階大会議室

講師経歴
1940愛知県生まれ。
1964早稲田大学第一理工学部建築学科卒
1966早稲田大学大学院理工学研究科修了
1966大林組入社  技術研究所にてコンクリートの技術開発と指導に従事 1973 米国カリフォルニア大学バークレー校留学
1997 大林組技術研究所 部長
2000 大林組退職
2001 関東学院大学工学総合研究所 ほか非常勤
   コンクリート関連学協会の多数の委員会活動に参加し、
   共著書も多い。日本コンクリート工学会名誉会員

■講演内容「企業における技術開発と研究活動について」
これからの進路を建築分野へ向けている学生に対し、今後の建設業界に対応するメッセージを伝えたい。大学卒業後50年という時間軸で回顧すると、当時常識として考えていた諸規範は大きく変遷してきたことに気付く。一例を挙げれば、小生の大学生時代の建築は31m以下の高さ制限を受けていたのである。従って各種のシステムは、場所や時間の経過とともに変化していくのである。その潮流を大局的に見通し、変化に対応する能力を身に着けるよう心掛けるとよい。
1. マクロ的視点から見た建設需要と雇用
戦後復興と経済の高度成長期が続いていた長い間、我が国GNPに占める建設投資額は20%近いレベルで推移し、かなりの活況を呈していた。現在は、インフラ整備等の建設需要が一段落して建設総投資額は最盛期の約半分にまで低下し、かつ新規の建設が減って維持保全に重点が移りつつある。一方、建設就業人口をみると、建設投資額が半減しているにも拘らず、それほど減ってはいない。目下、2011年の東北大震災復興事業と五輪新施設の建設のため一時的人手不足現象が生じているが、全産業における建設投資額や就業人口は長期的にみて減少する傾向にある。他方、建築を教える大学の数はこの50年間に飛躍的に増加し、建設需要の景気と無関係に卒業生が社会に供給されている。
2. 建築関連職能と要求される資質
我が国の大学では建築は工学系の学部に扱われることが多いが、建設業界では従事する職種によって要求される資質にかなりの幅がある。例えば、設計業務・現場管理業務・常設管理業務・研究開発業務などに要求される資質は、一口に理科系という分類では括れない。また建設は多数の分野が関わり合って成り立っていて、建築物が複雑になるにつれ更に分化していく傾向にある。設計を例にとってみても、意匠設計、構造設計、環境設計と分化して専門化されてきた。この中で特に大切になってくるのは、関連する諸分野を総合的にまとめ上げていく能力であり、オーケストラの指揮者的役割を指す。この能力は、設計業務・現場管理業務・技術開発業務でも共通して要求される資質といえよう。
建設関連業務の専門化が進んでいるが、分化したすべての業務の専門家になることはできない。人物像としては、まず専門家として行動できる特定の分野をもつこと、そのうえで関連する諸分野をカバーできる浅くても幅広い知識を持つという、所謂T字型人間、V字型人間が望まれる。
3. 技術開発・研究は誰がすべきか?
研究と開発は、目標・期間・費用・成功率などにおいてやや異なったものであるが、研究・開発を民間で行う場合、長期的に人材を育てる余裕が必要であり、その成果は会社に蓄積されるというメリットがあった。かくして我が国では研究・開発の主体が民間企業を中心にして進められ、すぐに利益に直結しなくても長期的に見て成果を出すという経営スタイルが定着し、我が国の主要建設業はそれぞれの技術研究所を持つに到った。しかしながら、昨今のグローバル化の流れ中で終身雇用制度が崩れつつあり、海外株主による研究・開発の投資効率の追求もあって、建設業による研究・開発が転機を迎えようとしている。他方、我が国において民間企業に代り研究・開発を実施できる組織は現段階で未成熟であり、直ちに切り替えられる状況にはない。
4. 米国と日本のシステムの相違
我が国建設業界のシステムは、建設会社における研究・開発活動だけでなく、設計施工一貫方式、設計部や設備部をもつ建設会社組織、契約慣行、下請け制度など世界でも独特の制度に支えられてきた。この他、終身雇用、年功賃金制度、紛争処理の方法、家族関係など社会一般の慣習も我が国独特の方式が踏襲されてきた。一方、米国の建設業界は、業務毎に分離独立した企業形態をとり、設計施工一貫の方式は馴染んでいない。設計と施工の間のトラブルは、すぐに係争案件として法廷に持ち込まれ、解決に時間がかかり、法廷闘争のための契約の精査、裏付けデータの確認などに翻弄されている。我が国の諸制度が決して米国の制度に劣っているとは思わないが、地球規模での経済活動が拡大していく中で、グローバルスタンダードが標榜され、米国式のシステムに引き寄せられている我が国の現状を懸念している。特に海外で建設活動を行うに際しては、周到な準備をして取り組まなければならない。
5. 建築材料と学問的体系
建築材料には種々なものがあるが、構造材料として量的にも最も多用されているのはコンクリートであり、研究発表題数も最多で学問としての体系化も進んでいる。しかしこのコンクリート技術を日本で学ぼうとすると、建築学科、土木工学科、材料工学科にまたがっており、大学のカリキュラムの再編成を考慮すべき時期がきている。早稲田大学は、これまで木材や各種仕上げ材の研究を取り上げてきた数少ない大学である。然しながら仕上げ材料全体の体系化は未達成であり、是非挑戦してもらいたい。性能設計の考え方の導入が有効かも知れない。仕上げ材料の専門家は数が少ないので珍重される反面、建築材料学の主流になりきれないという悩みもある。
6. 結び
今まで述べたように建設業界はシステムが不安定な時期を迎えている。各種のシステムは常に変化し続けていく。したがってこれからこの業界で生きていくためには常に全体の体系を見て、自発的かつ柔軟に行動することが大切である。

質疑
輿石:質問というよりも感想になるが、資料①.3,「マクロ的視点から見た建設需要」のような施工関連の話は材料と関連づけるのが難しく、なかなか教えられないのが現状であって、貴重な話が聞けた。

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