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(旧 「防水屋台村」建設中)
(RN219Y )早稲田大学OBによる「建築材料および施工」連続講演  
早稲田大学OBによる「建築材料および施工」連続講演 
 
第1回講師:難波蓮太郎工学院大学名誉教授
 


早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科の輿石教授は2013年3月より、早稲田大学理工学部55号N館会議室で学生とOBによる勉強会である「建築材料及び施工研究会」を隔月で開催しています。

輿石研


第1 回は難波蓮太郎氏(2013年5/31)、第2 回は中根淳氏(7/26)、第3 回は十代田知三氏(9/27)、第4 回は石川廣三氏(12/13)、第5回は中山實氏(2014年4月18日),第6回は松本洋一氏((7月4日)、第7回は小早川敏氏(10月20日)が講師となり熱弁をふるい、いずれも予定の講演時間を大幅に延長しての力の入ったものでした。

講師は、それぞれ自らの学生時代からの 研究過程の苦労話や研究者としての様々なノウハウを伝えた。さらに輿石教授は「建築材料の教科書にはあまり載っていない先端的なお話や研究の裏話苦労話をお聞きしている。その後の懇親会は毎回盛り上がり、研究室の卒論生・院生とって大先輩方と交流ができる貴重な機会だ」と連続セミナーに大きな手ごたえを感じ ています。

各講師は、苦い経験や、研究者・技術者としての喜びを率直に語ります。記者は毎回参加させていただき、予定時間をいつもオーバーする講師の熱演に、後輩たちへの愛情を感じ、うらやましく思っていました。これまで各回の様子はルーフネットで紹介してきましたが、このほど、輿石研究室としての講演記録をいただきましたので、これを機に「ルーフネット・輿石研究室だより」として順次紹介してゆきます。第1回は工学院大学名誉教授・日本漆喰協会顧問の難波連太郎氏です。

第1回 漆喰の効用

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難波連太郎氏(左)と十代田知三氏(右)


■講師:難波蓮太郎工学院大学名誉教授」
■開催日時:2013年5月31日 18時~19時半
■開催場所:早稲田大学西早稲田キャンパス 2階大会議室
■講師紹介
 工学院大学名誉教授、日本漆喰協会顧問
1933 東京生まれ
1956 早稲田大学第一理工学部 建築学科卒業
1958 早稲田大学大学院工学研究科建設工学専攻建設工学修士課程修了 1958 工学院大学助手就任、専任講師、助教授、教授、を経て2000年に大学名誉教授
1997~2006 滋賀県立大学環境科学部非常勤講師


■講演内容
1. 今までの経歴
 学部卒業後、大成建設の面接を受けるが就職できず、十代田先生・田村先生のもとで修士を過ごす。卒業後、十代田先生から、工学院大学の下元連研究室助手になるよう勧められ、勤め始める。タイル張りの圧着工法に用いるポリマーセメントの研究を発端に、そのまま塗り物の研究を続けているが、途中から漆喰に興味を持ちはじめる。自分から道を決めるというより、周りの方々から与えられた役目や仕事をこなしてここまで来ている。人生はそういった風に決まっていくことが多い。
2. 漆喰の効用
鈴木光さんと一緒に漆喰の研究などを行う。鈴木光さんは難波先生の教え子にあたる。
漆喰は、生石灰を水で消化した消石灰をバインダーとしており、強アルカリで抗菌作用が高い。アルカリであり続けるためには、炭酸化してはいけない(炭酸化すると中性化していき、アルカリ性ではなくなる)。また、高い湿度の環境下で炭酸化が進む。6畳間に漆喰を塗るとして、50%程度炭酸化すると仮定すると、6畳間77500室で東京ドーム1杯分のCO2を吸収する。今後も積極的に漆喰を用いるべき。
 室内の湿度変化を、ビニールクロス貼りと漆喰塗りとで比較すると、漆喰塗りの場合に、室内の絶対湿度が下がり、湿度変化の波も少なくなっている。漆喰の空隙は40%以上であり、微細な気孔も多く、これが調湿性を実現している。
3. 海外の消石灰利用
 南フランス、アヴィニョン近郊(ローマ水道橋)
内部導水路に石灰クリームが塗られており、殺菌の目的だったのではないか。
 中国(大連)・メキシコ・チベット、ギリシャ(ミコノス島)・ベルギー(ブリュッセル)  
世界各国で防虫・抗菌の効果を期待して、街路樹の樹幹に石灰クリームを塗っている。ベルギー(ブリュッセル)、スウェーデン(ストックフォルム)、ギリシャ(ミコノス島)、イスラエル(ハイファ)では、建築内外で石灰クリームがつかわれている。ギリシャ、スペイン(バルセロナ)、イタリア(ヴェネチア)などで炭酸化の具合を観察してきた。
4. 長崎の軍艦島見学
 長崎の軍艦島に、2011年に漆喰協会で見学を行った。各所にフェノールフタレインを掛けて、呈色具合を確認。石垣護岸には、天川漆喰(水硬性漆喰)が石の接着に使われている。
5. 太陽軒(埼玉県川越市 1929年竣工)の改築工事
2003年3月、耐震補強と内外装の改築を依頼され、当時開発した既調合漆喰(ピンク色)を用いた。また、耐震補強法では、新築で用いるホールダウン金物は使えないので、フクビ化学工業(㈱)と開発したARS工法(Anchor Rope Reinforcement System:アラミド繊維を用いて基礎と柱の固定する工法)で行った。特徴として、既存木造住宅でも使用できる。
6. 各地の伝統的左官仕上げ
 左官材料・工法の特徴、建築と左官の変遷、日本壁の定義と特徴、各地域の建築紹介
 北海道(豊平館、旧日本郵船小樽支店、旧後藤商店)
 東北―岩手(千葉家・小野寺家・佐藤家・加瀬谷家住宅土蔵)、山形(銀山温泉旅館、長源寺)
 北陸―富山(鏝絵各種、本磨き海鼠)、石川(石川門、能登の釉薬レンガ外壁)、長野(旧開智学校1)、海鼠壁各種)
 関東―埼玉(太陽軒、遠山記念館2))
 東海―静岡(伊豆長八美術館3)、旧岩科学校)、三重(赤福本店「竈(伊勢磨き)」)、愛知(名古屋「信長塀」4))
 近畿―京都(角屋)、兵庫(姫路城)、岡山(倉敷の土蔵の海鼠)、島根(石州左官-鏝絵)
 四国―高知(久保田騎志夫邸、吉良川町「石積み」)、徳島(卯建の意味5)、貞光町の二層卯建など)、愛媛(内子町)
 九州・沖縄―大分(安心院町の鏝絵)、長崎(眼鏡橋(天川漆喰を使用)、軍艦島)、沖縄(琉球石灰)
挿話
1) 擬石の技術が多く使われている。海外に行った際、スペインやハンガリーで、擬石風の仕上げが多く使われているのを観察した。
2) 遠山記念館には、室岡惚七(設計)、中村清次郎(大工)、馬路喜三郎(左官)が関わった。
3) 鏝絵名人列伝―入江長八を筆頭に、吉田亀五郎(別名 沓亀)、伊藤菊三郎、池戸庄次郎、大久保雅一を紹介。
4) 日本の三大塀(名古屋市「信長塀」、兵庫県西宮神社「大練塀」、蓮華王院「太閤塀」)
5) 「卯建は延焼防止のためにつけられたもので、立派な卯建を設けることは主人の評価につながっている」
7. 質疑
 質疑では、東大の行った軍艦島に関する調査、漆喰の音響効果、小舞壁の工法(縦壁工法)、などがテーマとして挙がった。
漆喰は、音を乱反射していい音が出る。石膏は硬くて、平面的すぎる。思い返してみると、実は卒論で、漆喰の音響効果を検討していた。今、もう一度漆喰音響効果について見直している。
                                (記録・輿石研究室 博士後期課程3年 中村)




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