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(旧 「防水屋台村」建設中)
緑のコートをまとう建築
屋根と壁面を覆うシングル葺きでそれを実現した
建築家・中村拓志氏の「録museum」

総合防水メーカー最大手の田島ルーフィング http://www.tajima-roof.jp/  が昨年創刊した「T's スタイル」(A4 カラー14ページ)の第3号が発刊され、建築家・中村拓志さんの、緑と建築が極限まで接近した作品「録museum」の記事を掲載している。

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シングル葺きによって建物の外殻は屋根と壁の境界がなくなった


亡くなった父親が収集していた絵や彫刻を展示する美術館をつくりたい。といっても格式張った美術館というものではなく、カフェがあり人々が集う街のサロンのような場所にしたいというクライアントの思いに応えるために中村さんは、がらんとした空間に絵があるのではなく、知らない人もふらっと訪れることができる、街に開いた公園のような場所にしようと考えた。そこでまず、植林をすることにした。単に美術空間にふさわしい環境というのではない。緑が少ないこの街に、ふっと息を抜けるような場所をつくることは地域に対してもよい影響を及ぼすだろう、さらには地域のシンボルにもなりうると考えた。


中村さんの思いと、それを実現するためのシングル葺き工事の苦労話。詳細なインタビューをここで、ここで見ることができる
http://www.tajima-roof.jp/interview/nakamura/index.html

こんな感じです。一部だけ紹介しましょう。

ここでは、緑のコートを建築がまとうように、緑と建築を密接させて建てることにしました。どんな樹木を植えるかを最初に決めました。敷地北側に元々あった樹木は、北風を避ける効果も期待できるので残すことにしました。新たに植えたのは、地元にある樹木で枝ぶりが面白いものや、クライアント一族が経営する自動車学校の敷地にあり、密集しすぎていて間引きする必要があったイチョウなどです。それらの配置は、日当たりや水はけの良し悪しなども考慮して造園業者さんと相談しながら決めました。木を植えれば日々のメンテナンスの上でもお金が発生します。これはたとえば高級大理石をイタリアから運んで来る、という素材の使い方に比べると地域の日々の経済活動の中での循環が期待できると思うのです。



木漏れ日のようなファサード

  屋根は3次元曲面に追従できる材料で葺きたいと、アスファルトシングルを選びました。屋根のボリュームには、落ち葉がはらはらと落ちます。そこが腐って汚く見えるのは避けたかったので、葉がたまる雨樋はつけられません。樹木と寄り添う建物なので、庇もつけられません。したがって屋根と壁は同じ材料で葺いたほうがきれいで、防水面でも安心です。ファサードはオブジェクティブなものではなく、常にサワサワと揺れ動く現象的な存在にしたいと思いました。屋根や壁に木漏れ日が重なり合う、というものです。そこで茶系統の二種の色を混ぜた特注色のアスファルトシングルを使いました。葉っぱが際立ち、木漏れ日が映えるよう、木の幹の色に近づけたかったのです。
シングル葺き


  屋根と壁面を覆うアスファルトシングルを葺くために、3ヶ月近くを要しました。壁面については、自着層付きの改質アスファルトルーフィングを張り、その上にアスファルトシングルを専用接着剤にて貼り付け、1枚ごとにタブの隅に隠し釘を打ち固定します。お椀の内側に屋根材を貼るような施工が続く屋根面の施工では、葺き足(垂直方向の間隔)とスリット間隔(水平方向の目地間隔)の調整に多くの時間を費やしました。葺き足は水平に揃えて、スリットは雨水の流れに合わせて葺くのが屋根材の基本ですが、複雑に勾配を織り成す屋根では、完全にこのルールが適用できません。雨水に対するルールを遵守しながら、意匠上の連続性を保つために、葺き足とスリット間隔を調整する作業が求められました。美しく仕上げながら、ルールの切り替わりをいかに気づかせないように貼るかが、葺き方のポイントとなったのです。勾配もすべての屋根面で微妙に異なります。シングルを1枚1枚、現場の墨出し線に併せてカットして貼っていくしかありません。この屋根で、アスファルトシングル本体を、そのまま使えたのはごく一部で、ほとんどの屋根面で材料を1枚1枚カットして貼っています。面と面が切り替わるところでは、シングル材をバーナーで丁寧に炙り、下地に馴染ませながら貼りました。曲率の厳しいところでは、特に細心の注意を払い、炙りながら転圧を行い入念に施工するようお願いしました。この現場の屋根は、ほとんど手作りといってよいほど手がかかっています。