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(旧 「防水屋台村」建設中)
第7回日本建築学会防水シンポジウム
次世代仕様などで建築学会が防水シンポ
建築防水分野における新たな取り組み

7回防水シンポ会場PA280040
日本建築学会防水工事運営委員会が10月28日東京・三田の建築会館ホールで7回防水シンポジウムを開催した。

雨水・地下水を建築物に入れないための防水技術は、最も基本となるものであり、建築物への要求性能や材料・工法の発展と連動して進化するものである。昨今では、環境問題や長寿命建築物への要求から防水を取り巻く状況の変化が著しく、さらに東日本大震災以降、省電力、省エネルギー対策は、喫緊の課題となっている。
こうした中、今回第7回目となる防水シンポジウムでは、防水工事運営委員会傘下の委員会活動成果の中から、「次世代を見据えた防水仕様のあり方」、「ケイ酸質系塗布防水の位置付けと試験方法の見直し」および「蓄熱槽の断熱防水を考える」の3つのテーマについて活動内容を公開し、活発な意見交換から得た要望・意見について、今後の学会委員会活動に反映することを目的とし開催された。
堀委員長PA280033
主旨説明を行う堀長生(大林組)委員長。会場での積極的な発言を呼びかけた。

掘 長生氏(大林組)
防水工事運営委員会では各種の調査研究や、仕様・指針の制定。改定を行っている。しかし性格上施工実績が多く、一般に普及した工法を対象にするため、新材料・新技術・新領域にかかわる情報や成果は委員会内部に止まる傾向にある。
こうした非公開資料や研究中の情報を公開することによって広く関係者に活用されるべきである、という考えのもと、2001年7月、当時の委員長であった東京工業大学田中享二教授(当時)の呼びかけによって、第1回防水シンポジウムが開催され好評を得た。その後、隔年で時流に応じたテーマで開催し、今回7回目を迎えた。テーマはいずれも鋭意調査研究活動中のテーマであり、会場からも意見を頂き、今後の委員会活動に反映させたい。



シンポジウムは5時まで以下のタイムスケジュールで進行した。(敬称略)

13:10~14:15
(1)次世代を見据えた防水仕様のあり方
輿石直幸(早稲田大学)、田中享二(東京工業大学名誉教授)、中沢裕二(日本防水材料連合会)、山田人司(安藤    ハザマ)
14:15~15:10
(2)ケイ酸質系塗布防水の位置付けと試験方法の見直し
小川晴果(大林組)、梶田秀幸(前田建設)、志村重顕(建材試験センター)、 若林康人(昭和電工建材)
<休憩>15:10~15:25
15:25~17:00
(3)蓄熱槽の断熱防水を考える
佐々木晴夫(大成建設)、島津路郎(東洋熱工業)、高橋誠治(JSP)、中村修治(住ベシート防水)、堀江一志(ダ    イフレックス)、沼本耕一(奥山化工業)



資料集PA280030
ここでは3つのテーマの内、「次世代を見据えた防水仕様のあり方」の様子を紹介する。


輿石直幸氏(早稲田大学)
陸屋根用メンブレン防水層の耐久性は10~20年が一般的で、30年を超えるものもある。それでも建築物の耐用年数よりも短く、建築物の供用期間中に防水改修工事が必要になる。建築物の長期使用は避けられない要請で、100年以上の供用を期待されることも珍しくない。そのために防水改修を数回繰り返し、建築物を維持管理していくことになる。ところが現状では、このことは新築時の設計段階では考慮されておらず、改修時期になって初めて防水改修工法の選定が検討されることがほとんどである。
これでは、資材、環境負荷、費用面での無駄が多いだけでなく、当初想定の利用用途や設計意図とは無関係に改修工法が選定されたり、次期改修を考慮しない、一回限りの工法が採用されるなど、様々な問題が浮き彫りになってきた。
これらを踏まえ、今後標準となるであろう長寿命建築を想定した。次世代防水のあり方を検討し、時世代型防水仕様を提案するものである。

輿石教授PA280044
東京工業大学田中名誉教授の、後を継いで、学界における防水研究をリードする早稲田大学輿石直幸教授。
輿石氏は現行のJASS仕様で運用した場合のケーススタディーを報告した。JASS8の各仕様の防水層を100年運用した時に必要な投入し材料を算出したところ、100年の間に投入されるし材料は初期の2倍から、多い仕様では9倍に達することが判明した。


田中享二氏(東工大名誉教授)
田中きょうじ名誉教授PA280053
次世代防水とは、建物の長期間の使用の時代に沿う環境負荷を軽減し、ついでに経済的負担の軽減を意図した防水仕様と防水技術のこと。そこで提案したのが次の2つのパターン。
次世代防水のイメージ
左:エンベロープ型防水 。右:ビルトイン型防水。

エンベロープ型は新築時に建物100年使用中の改修方法(防水仕様と納まり)も仕様化された防水層。
そのためには①交換回数低減のための長寿命防水層の採用
②交換を前提としての設計面上の事前配慮(勾配、立ち上がり高さ、ドレンの納まり)が必要。

田中試案ビルトイン型PA280061
一方ビルトイン型防水は100年間改修・交換しない防水層であり
そのためには防水層は構造技術者と協議し屋上のスラブの一部となるよう、施工される。上はビルトイン型防水層の田中試案。


中澤裕二氏(JWMA技術委員長)
中澤PA280064
100年間運用した場合の累積コストの推移を工法別に算出した。そして防水機能を100年間維持するための課題として
①躯体と排水計画 ②設備機器 ③保護コンクリート ④改修計画の策定 などに関して問題点を提起した。

中澤。断熱保護使用防の防水運用計画PA280067
防水運用計画の例。断熱保護仕様の場合

山田人司氏(安藤ハザマ))
山田・ライフサイクルコストPA280071
山田氏は現在のJASS8仕様によって施工された防水層が、原設計時の屋上用途を変更することなく、100年間維持されるための改修サイクルを検討し、100年間の運用計画をしめした。
また次世代型防水仕様における、改修・更新期間を延ばすための手法として以下の項目を提案した。
①材料の使用量・積層数を1.5~2倍に増やし、防水層の厚みを増大させる。
②保護塗料の使用量を増やすか、フッ素系や高日射反射型の高耐久性材料を使用する
③補強布、ガラスマットなど補強材の使用量を増やす。

またシンポジウムで配布した「誰でもできる防水層LCCO2算定ツール」ソフトCDの説明を行った。
このCDは、防水層のライフサイクルCO2をエクセル上で目安として概算するもの。「防水層のLCCO2の算定を日常的に行うための補助ツールとして利用してほしい」

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発表のあと会場からは

①次世代型防水仕様として2つのパターンが示されているが、提案者としてはどちらが望ましいと考えているのか?
②ビルトイン型では防水層がスラブの中に埋め込まれてるが、スラブの強度低下は考えられないか?
③ビルトイン型では防水工事は100年に一度しか行われない。またゼネコンとの密接な協力のもとに施工されねばならないから、防水施工の体制や工事の業態が現在とかなり変わりそうである。この工法が良いとするなら、普及実現に向けて、様々な課題がありそうだ。どんな問題点を予想し、クリアーしてゆくのか?
などの質問があった。


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